人生初ブログです(パチパチパチ)。
もう気づけば2ヶ月も前のことになってしまいましたが、2017年3月に、北大路書房より書籍『ひとはもともとアクティブ・ラーナー!』(山辺恵理子、木村充、中原淳 編著)を出版していただきました。
「究極の教員研修教材」だと勝手に宣言しているこの本の内容と、出版までの道のりについて、数回に渡って本ブログに記していきたいと思います。
まず今回は、本書のベースになっている「マナビラボ・プロジェクト」について。
マナビラボ・プロジェクトは、東京大学・大学総合教育研究センターと日本教育研究イノベーションセンター(JCERI)の共同研究プロジェクトとして、2015年4月に始動しました。「高校での楽しいマナビを応援する」がコンセプトです。
(私は始動当初から2017年3月まで、本プロジェクトのプロジェクト・マネージャーを務めさせていただきました。現在も、非常勤講師という形で、細々ながらも関わりを持たせていただいています。)
始動当時は、前年11月に文科大臣の諮問で「アクティブ・ラーニング」という言葉が初等中等教育の文脈では公的にはじめて使われたばかり。大学入試改革の議論もあって、高校改革への熱気が高まるとともに、全国の高校では戸惑いや混乱も少なからず起こっていました。
そんな中、大総センターの中原淳先生のもと、調査開発・分析のエキスパート・木村充さんとともに高校におけるアクティブ・ラーニングに関する議論や言説を概観するうちに、
①みんな、全国の高校が今どういう状況か知らないままにイメージで物事語ってない?
②むしろ、次世代に残したいいい授業も今の高校にすでにたくさんあるよね
という思いが沸き上がってきました。
言い換えるなら、「確かに生徒の様子に関係なく進んでいく一斉講義型の授業や、意味を問うことなくひたすら暗記することを重視した学習は問題だけれど、高校改革を唱える人たちが言うほど実際にはそんな授業多くないんじゃない?」といった思いです。
そんな思いから「まずは実態を把握してから議論しようよ」というスタンスのもと、
①全国3893校の高校を対象とした悉皆型の大規模実態調査
②授業観察・ヒアリングを通した個別調査
という2つの調査を主軸にプロジェクトを進めていくことになりました。
①の全国調査に関しては、初年度に当たる2015年度には3893校に調査票をお送りし、62.0%に当たる2414校からご回答を得ることができました。2年度目に当たる2016年度は、追跡調査という形で前年度回答してくださった2414校に調査票をお送りし、74.3%に当たる1794校からご回答をいただきました。
この規模の悉皆調査としては、とても高い回収率だそうです。
本当にお忙しい中でご協力くださった全国の高校の先生方には、感謝してもし尽くせない思いです。改めて、心より感謝申し上げます!
多くの先生方のお力添えのおかげで、今までそれぞれの目で見える範囲の情報で語られていた高校教育の現状が、極めて網羅的に見えるようになりました。
報告書や分析結果はマナビラボ・プロジェクトの特設サイト(http://manabilab.jp)の中の「ニッポンのマナビ」のコーナーに掲載していますので詳細は省きますが、例えば
- 2015年夏の段階で「アクティブ・ラーニングに取り組んでいる教科がある」と校長が応えた高校は全国で75.5%に上り、決して少なくないこと
- とはいえ、実際には教師個人の努力でアクティブ・ラーニングを実施しており、教科全体あるいは学校全体での取り組みになっている高校は少ないこと
- 教師の世代によって、アクティブ・ラーニングと呼べるような授業を児童生徒として受けた経験の有無に大きな違いがあること
- 数学科は2015年夏段階では圧倒的にアクティブ・ラーニングに取り組んでいる教師が少なかったのに、わずか一年後の2016年夏にはその数を大きく伸ばしていること
- 活動と振り返りをセットで行わなければ、生徒に活動させればさせるほど学習効果が下がってしまうこと
などがわかってきました。
さらにマナビラボ・プロジェクトでは、
全国の先生方の貴重なお時間を頂戴して得たこれらの知見を、広く発信して先生方に少しでも還元したいと考えました。
そこで、先述の通り、特設サイト(http://manabilab.jp)を2015年12月に開設しました。以降、毎週水曜日更新の形で、調査分析の結果をはじめ、個別調査で拝見した授業や先生へのヒアリング調査のエッセンス、学びに関する理論書からの心に響く一節を解説する動画、現役高校生によるブログ形式の記事など、さまざまなコンテンツを公開しています。
また、各種教員研修や先生向けの雑誌への連載なども積極的にお受けしています。
もしご依頼等ありましたら、お気軽にお問い合わせください(info @ manabilab.jp ◀︎@前後のスペースを削除して入力してください)。
ただ、大変ありがたいことに、マナビラボ・プロジェクトが軌道に乗るに従い、数多くの教員研修依頼をいただいています。ですので、すべてのご依頼には応えられないというのが正直な現状です。
だからこそ。
だからこそ、書籍を書きました!
『ひとはもともとアクティブ・ラーナー!:未来を育てる高校の授業づくり』(北大路書房、2017)は、全国の研究主任の先生方や指導主事の先生方など「教員研修を実施する先生」に、少しでも時短で濃厚な研修を開発していただけるツールとしてご活用いただきたいと考えています。